先日の金曜ロードショーでは
が放送されていましたね。
最近は深層心理とか、感情の変化とか、そういったことにフォーカスした作品が多いですよね。
わたしは以前の金曜ロードショーぶりだったので、改めてじっくり観てみました。
感動した素晴らしい作品であるということ以外で私が気になったポイントは3点です。
- 死生観によっては辛い作品かもしれない。
- デラクルスは孤独であった。
- 不可解なダンテ(犬)の存在。
ひとつめ、
【死生観】
「死生観によっては辛い作品かもしれない。」
そもそもの前提として、この作品は家族の絆や愛は生死を越えて繋がり続けることの温かさを描いた作品だと思っています。
一般的な価値観としては家族はいつも仲良しでそれぞれのことを大事にするものであり、死んでもなお会いたいと思う愛しい存在です。
ただ、家族といえど同じ家に暮らす同居人のような関係性だったり、場合によっては憎しみの感情を抱いている人もいるでしょう。
そういった方にとっては、死してなおあちらの世界でも一緒にいなければならないのかと、この作品の世界観に苦痛を感じる部分があるかもしれません。
まあ、もちろんアニメの世界ですし自身を投影しながら観ていなければそうも思わないかもしれませんが。
また、
死は救済
と考えているタイプの方にとっては、現世となんら変わり映えのないあちらの世界の描かれ方について思想の違いを感じるかもしれませんね。
死ぬことで現世の辛いことから離脱できるという考えですから。
少し話はズレますが、昔は
「ハッピーエンドの物語しか認めない!」
いわゆるハピエン厨だったわたしでしたが、様々な作品に触れ友人の感想を聞き様々な捉え方があると知ってからは、物語の展開が辛ければ辛いほど、
「これは……メリーバッドエンドにしたほうがええかもしれん………。」
という感想を持つことも増えてきました。
※メリーバッドエンドとは
物語において、第三者にとっては死などの展開を含む最悪の結末だったとしても、当事者(登場人物の一人)にとっては救いであり幸せと感じるような結末のこと。
メリーバッドエンドは読者側からすれば逃げですよね笑
誰もが納得するハッピーエンドにならないなら、せめて当事者が納得するような結末を望みますという考えですから……。
つづいて
【デラクルスの孤独】
「デラクルスは孤独であった。」
劇中でリメンバー・ミーを作曲したハイターを騙して自身の曲として世間に発表し人気となったエルネスト・デラクルス。
彼は終始孤独でした。主人公ミゲルが
「あなたの、孫の孫です。」
と自己紹介したとき、えっと驚く訝しげな顔をしていました。自分には家族がいないけども、という表情だったのかもしれません。
また、彼の周りには知名度の高いとされる人々やファンが大勢集まりますが、その中に友達や彼の家族のような人物は描写されておりません。
これらから、デラクルスは家族や友人といった心から親しい存在がおらず本当の意味では孤独だったと考えます。
彼に人気があったのは、ハイターが書いたリメンバー・ミーという素晴らしい曲だけでなく彼の才能・実力に魅力があったからです。彼が努力をしていないかというと、全くそうではなかったように思います。
「チャンスを掴め」
やり方は非道で許されるものではありませんでしたが、ハイターの曲を奪い自身を売り出したのも、彼の強い想いと行動あってのことです。
仮に彼に家族がいないとして、曲が売れるまで共に活動していた友人ハイターを手に掛け1人となり、努力し、そうしてできたファンたちはデラクルスの生前の活動の支えだったかもしれませんね。新たな仲間ができたような気持ちだったかも。
そのため物語ラストで彼の悪事がファンの目の前で暴かれた時も、なんとか取り繕うような顔に少し心が痛みました。
デラクルスがかわいそう とさえ思いました。
彼は、自身の才能を自身で認められなかったのですね。自信がなくて、他者を排斥する行動を取ってしまった。
彼のしたことは到底許されることではなく報いを受けるべきではありますが、最終的には、この物語のテーマである 許し を唯一与えられなかった人物でした。
祭壇に写真を飾ってくれる家族はいなくても、その知名度からすべての人から忘れ去られることはなく、消滅することはない。今後は誰からも相手にされることなくひっそり1人で死後の世界を生きるのでしょう。
みっつめ
【ダンテの不可解な存在】
「ダンテ(犬)の存在そのものが不可解である。」
ミゲルの音楽友達であり、死後の世界ではミゲルを導くことになるダンテという犬。
序盤から気になっていたのですが、この犬、こちらの世界の生き物だったのでしょうか??
あちらとこちらの世界を、初めから行き来できていましたよね。
上2つの気になった点とは違って、こちらはもしかするとファンブックだったり何かしら公式の情報があるのかもしれませんが、都合が良すぎるこの犬……なんだか怪しい。
すべてを理解した上でミゲルを導いたのでしょうか。ミゲルのために存在したのでしょうか。
人知を超えた存在となると、神と崇められるような神聖な生き物だったのかもしれません。
目に見える価値と本質は、ふたつ相反し大きな意味を持つことがあると、なんだか身が引き締まるというか、ゾッとするような存在に感じました。
かの王子も、
「本当に大事なものは 目に見えない」
と言っていましたものね。
ここまで色々わたしの感想を綴ってみましたが、すべてまとめて素敵な作品であることに変わりありません。
オレンジが印象的なように、ふっと心に火を灯すようなじんわりとした温かさをもつ優しい作品でした。
しま はちねこ