しま はちねこの本棚

雑多なジャンルについて感想など綴っております。

ノクツドウライオウ 読書感想

ノクツドウライオウ読書感想文

青少年読書感想文全国コンクール 中学生の部 課題図書になっている、

 

ノクツドウライオウ 著佐藤まどか 出版あすなろ書房

 

ノクツドウライオウ -- 靴ノ往来堂 [ 佐藤 まどか ]

価格:1650円
(2024/7/27 17:35時点)
感想(0件)

 

を読了しました。

本記事では中学生の部の課題図書のひとつについての感想文を書いていきますが、別の記事でも随時 小学校高学年の部(5,6年生)、小学校中学年の部(3,4年生)、中学生の部別課題 についての読書感想文を公開していく予定です。

 

この本の帯には

「あなたの人生を変える魔法の靴店!」

「祖父の作った靴を持つ人たちにおきた、人生を変えるほどの変化。それは進路に迷う夏季の心を大きく揺さぶる。さわやかな青春物語!」

と紹介文が載っていた。

その通り、終始さわやか。靴屋との繋がりがお客さんたちを変えてゆくことを切り取った作品だったと感じた。おそらく、こういった出会いは靴屋を営んできた歴史の中で前から珍しくなかったのだろう。4代目の靴職人である祖父や店長の祖母は、物語で出来事についてあまり動じる様子はない。だからこそ、中学生である主人公夏希の瑞々しい感性や瞬間的にほとばしる感情が物語の中で浮き彫りになって、光っている。

この主人公と同じく中学生の頃に読めば、また違った感想になったかなと少し悔しくなった。

(ここからはわたしが進路に悩む中学2年生だったら・・・という想像込みで書いてみる。なんだか虚しい笑)

 

主人公夏希は、4代続くオーダーメイド靴屋である往来堂を自分が継ぐべきかどうかを悩んでいる中学生だ。この年にして家業を継ぐかどうか考えることになったのは、次期5代目として育てられていた兄が姿を消したことがきっかけだった。左から右へから読むと「ノ靴堂来往」と読める昔から受け継がれてきた鉄看板も、古い建物も、工房の雰囲気も、靴づくりも大好きだ。でも、本当になりたいのはシューズデザイナーで、古い形で地味な靴ではなく、派手な色の靴を作って全身コーディネイトすることを夢見ている。

 工房で夏季の師匠、つまりマエストロである祖父の技術を学びながら、本当に自身がやりたいことと靴への情熱、オーダーメイドであることの意味について思いを巡らせていく。

 将来の夢が決まっていない私は、何を目指すのか目標もないのに何かを頑張らないといけない気がして焦っていた。大人に受験が近いと言われているのに部活も毎日あるし、しないといけないことは多いのに自分の人生を変える何かに直結していない気がした。「人生を変える」と紹介文にあったので、少しの期待を持ってこの本を読み始めた。 

 読み終わってみて気づいたのは「人生を変える」とは、よりその人らしく過ごせるような手伝いをすることではないかということだ。往来堂の土地を売ってもらいたい土地開発会社の人は、靴を仕立ててもらって人生が変わったと思えるほど体の不調が解消したし、朝のゆううつな気分が晴れた。お得意様だったおしゃれな水野さんは、お気に入りの靴を修理し人生最期のおしゃれをして旅立った。

 靴が変えたのは人生そのものではなくて、人生の彩り方なのかもしれないと思うと、少し肩の荷がおりたように思った。自分が誰かの人生をまるっきり変えてしまうなんて、大仕事をしなければいけないような気がしていたからだ。

 主人公夏希は、物語の最後に自身にとって初めてのお客さんのために働くことになる。出来上がった特別な靴はお客さんの大切な瞬間に花を添え、テレビで取り上げられるほどの話題を呼んだ。尊敬するマエストロと一緒に靴を作り評価されたことは得難い喜びだっただろうと思う。それは偶然や運が味方したのではない。クロッキー帳にアイデアを書き溜めてきたことや、じっくり黙ってマエストロの技術を見て学んだからこそできたことだ。そして、相手が誰であれ躊躇せずに自身の考えを伝えたからこそ実現したことだ。温めてきた思いの強さが呼び込んだ成果だったと思う。

 強い思いは人に影響を与えると教わった気がする。また、誰かの人生を変えた瞬間に立ち会うことで自分が変わっていくこともあるのだろう。今回初めての仕事を成し遂げた夏希はどう変わっていき将来は何になるのか、兄に対する思いは変化していくのか、想像に胸が膨らんだ。それと同時に、私が将来何になっても、人と人は真剣に向き合うことで影響していくし素敵になるだろうとすがすがしい気分になった。

 

 

 

それではまた次の記事で。


f:id:kutsushimtacat:20240727174517j:image

 

しま はちねこ